トリガーハッピーへの道 -アングル理論-

シャッターを切れば切るほど楽しくなっちゃう、Keng Chi Yang (けんちゃん) です。

今回もポートレートを理論で詰めていこうシリーズ(勝手に呼んでる)です。

ポートレートでぶつかる壁のひとつとしてよく聞くのが、物語を表現出来ないとか同じような写真しか撮れない問題。

これは先日書いた「キットレンズで誰でも撮れるポートレート」 でも改善できるのですが、今回はさらに鑑賞者へ与える印象を理論で操作していきます。

理論で詰めるにしても、何度かに分けないとすげえ文章量になるので、今回はアングル理論(勝手に呼んでる)のみをお伝えします。

これが理解できればストーリーは思いのまま、シャッターじゃんじゃん切れて、しかも色んな写真が撮れる、だからさらにシャッターが切りたくなります。切れば切るほど楽しくなるトリガーハッピーの誕生です。

まずアングル理論を簡単に書くと「どっから(ポジション)カメラをどの方向(アングル)に構えるか」ってことです。ローアングルとか聞いたことあると思いますが、これは被写体より低い位置からカメラを上方向に構えることです。

今回はポジション編→アングル編→応用編の順に解説していきます。

ポジション編

クローズアップ (緊張)

クローズアップは顔やパーツのアップなど、画面いっぱいに被写体へ近寄って撮影。緊張感や繊細な感情の揺れ、親密感や秘めた想いなどの表現に向いています。

つまり、あまり大胆では無い、繊細な感情の動きですね。告白とか、一発触発緊張のシーンとか、呼吸が止まりそうな感じ。

秘めた想いなんかもそうですね。収め方についてですが、はみ出しちゃっても全然構いませんし、作例よりもっと寄ってもいいです。

目だけや唇だけをマクロレンズなどで寄って撮っても、緊張感の演出ができます。

バストアップ (大きな感情の動き、親密)

画面に少し余白を設け、胸の下端あたりから上を撮影します。

親密感や大きな感情の動きの演出に向いてます。

めっちゃ楽しそうな感じや、すっごい悲しそうとか号泣とか、先ほどよりも大きな感情の動きに向いています。

笑顔をバストアップで撮るときは、モデルの目線の高さぐらいにカメラを構えます。恐怖や孤独などは後述のローアングルとハイアングルを参考にしてください。

ロングショット (説明、孤独)

遠くから被写体を撮影します。ゆったりした感じや場所の説明カットなどに向いてます。

また、孤独感や心の弱さなども表現できます。

以上の合わせ技で二人だけの世界(2枚目)、なんてのもそうですね。
今までとは違い、感情の動きは小さいのがロングショットの特徴です。

説明カットに多用される理由の一つでもありますね。

ここまでがポジション(距離)のお話でした。次はアングルの効果を見ていきます。

アングル編

ハイアングル (説明、喪失)

高いところからの説明カットや孤独、自信の喪失などに向きます。

足跡は喪失の表現に効果的な被写体です。

ロングショットも組み合わせると孤独感や心の弱さも併せて伝えることができるので、さらに効果的に伝えることができます。

ローアングル

下から覗き込み撮影します。存在感(威圧感や力強さ含む)、大きさのアピール、動きの迫力の演出に向きます。

2枚目は、この存在感の演出を逆手に取り、大きな存在に対峙した人の恐怖の演出をしています。

この演出は上を向いて、自分よりも高いところに強大な相手がいるように見せます。

つまり、見ている相手からは見下ろされていると思わせる演出が組み合わさって完成します。組み合わせ技もなかなか面白いですよ。

応用編

ここからちょっと応用編となっています。

ここまでの写真は、水平をある程度整えた状態で撮影していました。

そこを崩していくと、また違う印象を与えることができます。さらに同じ構図でアングルを変えると、どのように印象が変わるかも見ていきます。

斜め (不安)

水平をずらして撮影するため、画面が不安定になります。朦朧とした意識や不安感、不信感などの表現に向いています。

2枚目はさらにハイアングル(後述)になっているので、とことんやる気の喪失を感じます。

スピニング (焦燥)

個人的に大好きでポートレートでは多用してます。被写体を中心として回り込むように撮影します。

同じ場所で背景がぐるぐる回るので、印象の違う写真がいっぱい撮れます。焦燥感やスピード感を表現するのに向いてます。

さらに手元が多少不安定な分、動きの演出にも向いています。複数枚で写真を投稿する、特にTwitterで効果的ですね。

ストロボと併用することで背景が流れるため、さらにスピード感や焦燥感の演出が強くなります。

上開け

被写体の上部分を余白にする事で、スケール感を表現します。

余白を大きく取ると被写体の小ささ、遠さの演出が出来ると、これでは構図っぽい話しになりそうですが、今回はハイアングル、ローアングル、アイレベルから撮った場合、上開けで撮るとどうなるかの説明です。

  • 1枚目のハイアングルでは、予感や時間経過の表現をするのに向いています。
  • 2枚目のローアングルでは開放感や大きさ、感情の表現が豊かです。
  • 3枚目のアイレベルだとその中間で、わりとぼーっと眺めているような、状況説明のような、落ち着きのあるカットに変わります。

同じような構図でもアングルが変わるとこれだけ印象が変わってくる例です。

総括

よく構図の話しで消失点とか黄金比がナンチャラって書いてますが、その前に考えるべきなのがこのアングル理論です。

構図は写真にとても重要な要素のひとつですが、あくまで画面を整えるものです。

実は今回の記事では、日の丸構図と三分割構図ぐらいしか使っていません。僕は他の構図よく知らないですしね。

それでもバリエーションは無限に作れて、伝えたい印象を操作できるのです。

写真は知識があれば誰でもある程度は撮れるようになります。でも知識が無いと、自分がいいと思ったり好きだと思った写真を説明ができないし、再現ができないんですよね。

再現できれば理解も深まるし、自分の方向性も確立しやすい。僕は理論で写真を撮っていますし、こうやって記事としてまとめていますが、実は感情むき出しの写真なんです。

ポートレートって、何を想っていて、何を伝えたいかってのがめちゃくちゃ大事だと思っています。

写真に感情は写らないとかたまに聞きますけどね、感情は写るし映ると思うんですよ。その方が素敵じゃん。

だから僕は、誰よりも伝えたいから理論で詰めて、技術で撮ります。感情を写すための理論、変な話ですよね。

理論記事をこれからも出していきますが、これを読んでくださった方には、理論だけじゃなくて、ハートも大切にしてポートレートを撮って欲しいと願っています。

以上、ご高覧ありがとうございました。

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